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2021年5月14日

【前編】「教える技術」で教え方のプロになる!

育成支援図鑑

 

キャリアコンサルタント&広報担当 鈴木さくらです。

 

新入社員が入社して早1ヶ月半が経ちましたね。新入社員を教育するなかで「教えるって難しいな~」と感じている教育担当者の方々が多くいらっしゃるのではないでしょうか。

 

実は先日、弊社でも「教えることが難しい!」という声が挙がったので、社内勉強会で「教え方」についてメンバーにプチレクチャーをしたところです。

 

講師業を生業として「教えること」にかれこれ15年以上携わっている私も、いまだに「教えることって簡単じゃないな」と感じる場面に出くわすことがありますが、以前のように闇雲に悩まなくなりました。なぜなら、「教える技術」を身に着けているから。「教える技術」にもとづいて、場面に応じた改善ができるようになったのです。

 

今回は、悩める教育担当者に向けたエールを込めて、「教える技術」についてお伝えしますね!

 


【こちらの記事は主に以下の方々を想定しています】
▼新入社員に「教えるって難しい・・・!」と実感中のOJTトレーナーや教育担当者
▼教えることへの難しさは感じていなかったけど「教えたことができてない、なぜ?」と疑問に思っている先輩・上司の皆さま
▼「同じことを何度も言わせないでほしい」とストレスを感じている先輩・上司の皆さま などなど


 

 

 

■教えることは実は誰でも習得できる「技術」だった!

 

 

仕事の場面のみならず、日常生活のなかでも誰かに何かを教える場面はたくさんあるにもかかわらず、振返ってみると「教え方」について、学んでこなかった私たち。そう、学校で習わなかったのです。

 

そのため、いざ人に教えようとすると、いわゆる「KKD(勘・経験・読経)」でがんばろうとしちゃいます。

 

でも、それだと壁にぶち当たってしまう経験をされている方、多いと思うんです。

 

そこで登場するのが、「教える技術」。これはインストラクショナル・デザイン(Instructional Design=ID)とも呼ばれていて、高い学習効果が得られる教育の内容をシステム的なアプローチによって設計することで、れっきとしたひとつの研究分野です。

 

教え上手は、実は勘でもセンスでもなく、「教える技術」を身に着けている人。教える内容に加えて、「教える技術」を身につけていることで、相手に効果的に教えることができるんですよね。技術なのでトレーニングをすれば誰でもできるようになるんです。

 

 

 

■何を以て「教えた」といえるのか?

 

 

ここで少し振り返ってみてください。

 

これまで、あなたが教えたことを相手ができなかったことはありませんか?そんなとき、「前にも教えたよね?!」と言ったことはなかったでしょうか?

 

ちょっと耳の痛い話かもしれませんが、もしかしてそれはあなたが「教えたつもり」になっていただけかもしれません。

 

実は、専門用語で「学習者検証の原則」というものがあります。これは教える人がどんなに熱意をもっていようが丁寧だろうが、まったく関係なく、相手が「どれだけできるようになったか」だけが重要で、「教えられたかどうかは学習者をよく見て検証せよ」ということ。

 

つまり、相手が理解できて、できなかったことができるようになって、初めて「教えた」と言える状態になるんです。そうではなかったら、「教えたつもり」、残念ながら、独りよがりになっていたということなんですよね。

 

そこでよく挙がる質問は、「学ぶ側にやる気がなかったら、いくら一生懸命教えたって身につかないんじゃないの?」というもの。

 

たしかにそう言いたくなる気持ちはわかります。労力をかけて教えたにもかかわらず、そもそも相手のやる気がなかったら、相手の問題じゃない?と言いたくなる気持ち。これまでは学ぶ側が学ばないのは学ぶ本人の責任だと考えられていました。

 

ですが、「教える技術(インストラクショナル・デザイン)」においては、逆なんです。すなわち、「学習者検証の原則」でいくと、学ぶ人が学んでいなかったら教える側の責任だという考え方をするんです。

 

最初、私はこれを知ったときには「だいぶシビアだな・・・」と思った記憶があります。でも、「学ぶ側の責任」と考えてしまうと、教える側の改善ができなくなってしまいます。もはやお手上げ状態。それは教える側としてちょっとツラいですよね。

 

そうではなく、「教える側の責任」と捉えると、いくらでも工夫の余地があって、改善ができる。その考え方のほうが楽じゃないでしょうか?

 

そして、「教える技術」では、学ぶ側にやる気がないのならば、やる気を起こしてもらうことも教える側の責任範囲だと考えます。教えてもよい結果が出ないのであれば、教える側の技術不足のせい。ならば、その技術をトレーニングで身に着けていけばいいですよね。

 

 

 

■「具体的な行動」にして教えるゴールを示す

相手に何かを教える場合、何を教えるか明確にしておくことが大切です。

 

 

「ん?それって当り前じゃない?」と思われるかもしれませんが、実は教える本人が不明確なことがあるんです。教える側が教えることを曖昧だったら、もちろん学ぶ側にも伝わらなくなってしまいますね。

 

たとえば、「この企画書じゃだめだよ、もっとわかりやすくして」。

 

これだと、どこをどう直せばいいのかわからないですよね。教えるのであれば、相手にできるようになってほしいことを具体的な行動としてゴール設定すること。ゴール設定というと仰々しいかもしれませんが、たとえば、「この企画書の趣旨を3つの箇条書きにすると、わかりやすく伝えられるよ。このレイアウトも今の半分に収めてみて」といったように。

 

「テレアポをガンガン進めて」「計画性をもって取り組んで」「効率よく仕事して」といったような教える側の要望も具体的な行動としてゴール設定してみましょう。

 

たとえば・・・

▼「テレアポをガンガン進めて」⇒テレアポを今日は〇件以上かけて
▼「計画性をもって取り組んで」⇒納期の前日までには終わらせて
▼「効率よく仕事して」⇒todoリストを洗い出して優先順位で取り組んで

 

というように伝えられると、学ぶ側は取り組みやすくなりますよね。

 

 

 

■3つに分けられる「教えるゴール」

 

 

実は、具体的な行動として明確にする教えるゴールは3つに分けられます。

 

 

A:運動スキル・・・身体の動作が中心となる(例:何かの機械やPCの操作を覚えるなど)
B:認知スキル・・・複雑な思考が中心となる(例:伝わりやすい提案書を作成する、プレゼンするなど)
C:態度スキル・・・運動スキルや認知スキルを使おうと決心する能力(例:リーダーシップやモチベーションなど)

 

後編では、これらの3つのゴールについて詳しくお伝えしています。こちらからどうぞ!