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【後編】「教える技術」で教え方のプロになる!
【こちらの記事は主に以下の方々を想定しています】
▼新入社員に「教えるって難しい・・・!」と実感中のOJTトレーナーや教育担当者
▼教えることへの難しさは感じていなかったけど「教えたことができてない、なぜ?」と疑問に思っている先輩・上司の皆さま
▼「同じことを何度も言わせないでほしい」とストレスを感じている先輩・上司の皆さま などなど
上記の方々に向け、エールを込めて「教える技術」についてお伝えします。よろしければ、ぜひ前編からお読みくださいね。
さて、「教える」と一言で言っても、実は教えるゴールは3つに分けられます。
A:運動スキル・・・身体の動作が中心となる(例:何かの機械やPCの操作を覚えるなど)
B:認知スキル・・・複雑な思考が中心となる(例:伝わりやすい提案書を作成する、プレゼンするなど)
C:態度スキル・・・運動スキルや認知スキルを使おうと決心する能力(例:リーダーシップやモチベーションなど)
これら3つの教えるゴールについては、それぞれ適した教え方があるんです。一つひとつ教えるコツをお伝えしますね!
■A:運動スキルの教え方
身体(動作)で覚えていくのが、この「運動スキル」。たとえば、何かの機械、アプリケーション、PC操作や、ビジネスマナーでの名刺交換や来客対応、訪問方法などなど。
運動スキルは自分でマスターしてしまうと自分ができなかった頃のことを忘れてしまうので、教えることが実は難しかったりします。
そこで教えるコツは以下3点。
1)やさしいステップからスタート
初級・中級・上級という言葉があるように、一足飛びに上級編を教えてもうまく身に着けることはできませんよね。
たとえば、名刺交換であれば、いきなり複数との名刺交換を教えるのではなく、まずは1対1での名刺交換を教えるといったように、やさしいステップ(初級編)から。それができるようになったら、次は少しハードルを上げて・・・というように教えていきます。
2)スモールステップの原則
やさしいステップから始め、スモールステップで段階を区切りながら教えていきます。つまり、習得させるまでの動作を分解して教えていくということです。
たとえば、先ほどの名刺交換でいくと、
①折れ、汚れが無いかチェック
②名刺入れに保管する
③名刺入れを取り出し名刺交換ができるように準備
④交換する人数分の名刺を名刺入れに挟んでおく
⑤立った状態で右手に名刺、左手に名刺入れを持つ
⑥会社名・名前を名乗る「(会社名)の(名前)と申します。よろしくお願い
いたします」
⑦相手の名刺入れに向かって差し出す(立場が下の方から相手に差し出す)
といったようにスモールステップの原則で進めていくと、失敗率を減らして習得することができるんです。
3)即時フィードバック
スモールステップで進めていくときに「相手を観察すること」がとても大事。できているか、できていないか、できていないならばどのあたりがスムーズではないのか観察して、フィードバックをします。
フィードバックをする際には、観察にもとづいて「OK、できてるよ!」あるいは「ここが違っていたから、こうしてみて」というエビデンスベースで伝えることがポイント。都度都度、褒め言葉を差し込まなくてOKです。
このフィードバックはその行動が起きた直後、「できるだけ早く」が望ましいです。学ぶ側にとっては、自分のことを見ててくれている安心感につながりますし、このフィードバックが刺激となってモチベーションにつながるからです。
■B:認知スキルの教え方
どのようにうまく思考できるかを教えることが、認知スキルのゴールです。
実は「頭で考える」認知スキルは以下の3つに分けられます。それは「記憶すること」「話したり書いたりすること」「問題を解決すること」。
ここでは、仕事の場面で多く登場する「問題を解決すること」にフォーカスして教えるコツを3点お伝えしますね。
1)「解き方のパターン=スキーマ」を習得させる
問題解決にはたくさんの思考のステップを踏まなくてはいけない、とても複雑な行為。
でも、解き方のパターンを知っていれば、解決することができます。この解き方のパターンのことを「スキーマ」と呼びます。
問題解決を教えるのは、このスキーマを学ぶ側に獲得させること。相手がわからないのは、理解力がないからではなく、スキーマをまだ獲得していないから。だから問題解決ができないんです。
たとえば、バグが発生したとき、クライエントからクレームがあがったとき、商品の納品が遅れているとき・・・などなど何かの問題が発生したときに解決できるスキーマを持っていれば解決ができるようになります。
2)多くのスキーマバリエーションを持っていることが問題解決能力を決める
スキーマは一つあればいいものではなく、どれくらいたくさんもっているかというバリエーションの多さがその人の問題解決能力の高さを決めます。
つまり、問題解決能力が高い人とは、これまでの経験や知識からたくさんのスキーマの引き出しを持っていて、それを瞬時に取り出せる人のこと。
たとえばクレーム対応だったら、「まずは初動として〇〇をする、次にこのアクションを取る、その次には〇〇をする・・・」といったように一連の流れとして土台を身に着けられると、回数を重ねていけば、一連の流れが順序良く漏れなく、スムーズに進められるようになります。
土台となるスキーマが一度完成すると、そのスキーマのなかでバリエーションを増やすことができるのが私たちのすごいところ。すべての応用編を教わらなくても、バリエーションのなかで対応することができるようになるんです。
そのためにも、まずは土台となるスキーマを教えることがポイントです。
3)獲得したスキーマをいかに柔軟に使えるか
スキーマが問題解決能力を決めますが、単にスキーマがただたくさんあればいいってわけではなく、スキーマをいかに柔軟に活用できるかが重要です。
たとえば、クレーム対応でも獲得したスキーマで様々な場面に当てはめて使えることを教える必要があります。いくらバリエーションが増えても、それを柔軟に活用できなければ応用範囲は狭いままですものね。
一見無関係のスキーマでも、「実は〇〇や△△といった場面でも、こんな風に使えるよ」と点を線で結んであげるように、柔軟に活用できるように教えられるといいでしょう。
■C:態度スキルの教え方
ゴールとなる態度スキルは、「〇〇しようと決断できるようになる態度スキル」の教え方のこと。態度スキルとはなにかを決断する技術のことで、何かに取り組む前に「よし、これをやろう!」と決断しなくてはいけません。
相手が「よし、やろう」と決断することも、以下2点に気をつけることで教えることができるんです。
1)相手に気づかせる
「これをやって」「こうしてほしい」、指示・命令でも要望でも、言ったことに対して「はい、わかりました!」とすぐ取組む部下や後輩がいたら、上司や先輩は苦労しませんね笑。
そもそも、指示・命令でも要望でも、それを言われる前に実行してほしいですよね。相手に決断させたり、決心させるには、相手に気づかせることが最初のステップです。
気づかせるにはどうしたらいいでしょう?
たとえば、「成果を出す」ことについての態度を変えてもらうためにやりがちなのは、「今、成果を出さないと××になるよ」というお説教。お説教したくなる気持ちもよくわかります。でも、教える技術としては残念ながら「最も効果のない方法」認定されている方法なんです(もちろん、間違ったことをしたときなどに注意をする、お説教をするということが必要な場面もあります)。
教える技術としては、指示・命令よりもお説教よりも、「なぜそれをやることが必要なのか」「それをやるとどんないいことがあるのか」といった行動の核心ともいうべきものを相手に気づかせ理解してもらうように働きかけること。それによって、相手の心を動かし、態度を変えようという気持ちが生まれてきます。
2)気づいてもらえるような質問をする
テニスの名コーチ、ガルウェイはこんな例を出しています。初心者に「ボールをよく見て!」と指示を出しても「見てます!でも当たらないんです!!」と言い返されるため、指示の代わりに「ボールはどんな回転をしていた?」と質問をしました。
「ボールをよく見て!」という指示・命令をしなくても、ボールを見るような質問をすると効果的ということですね。
「企画書を書いて」ではなく「どんなイメージで企画書を書く?」、ホスピタリティを大切に顧客対応してほしい部下に「あなたがお店を選ぶポイントはなあに?何度も行きたくなるお店と一回きりのお店とどこが違う?」と質問する・・・そんな風に相手から答えを引き出すようなコーチングスキルを活用して質問をしていくと、質問された側は徐々に気づいていけるようになってきます。
気づいた後は相手の強みを伝えながらやる気を刺激して、背中を押せるといいですね。
■まとめ
前編・後編で教える技術のポイントをお伝えしました。
とくに部下に教える場合には教え方だけではなく、マネジメントも大いに関わってくるため、教え方だけで解決しないことも多々あります。
とはいえ、それでも「教え方」を教わってこなかった私たち。そのため、どうしてもセンスや勘、自己流になりがちですが、教える技術をもとに教えられると、きっと今の「教えるって難しい~!」や「何度も言わせないで」状態から抜け出せると思います。
どうぞご参考になさってくださいね!