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2021年6月10日

選考においてネガティブな情報を伝えているのに伝わらないワケ

採用支援図鑑

 

キャリアコンサルタント&広報担当 鈴木さくらです。

 

6月になり、22年卒の採用活動が佳境に入った企業様も増えているでしょうか。22年卒と同時進行で、23年卒のインターンシップが控えていますね。

 

今回の記事では、6月からインターンシップの情報解禁となった23年卒を見据えたうえで、22年卒の採用活動でも十分活かせる「採用満足度を上げるキーポイント」をお伝えします!

 

 


 

【この記事は以下の方々を想定して書いています】

・自社の採用活動を改善したいけど、どこを見直せばいいのかヒントがほしい新卒採用担当者様

・新卒採用の全体的な設計を見直したい採用担当者様

・選考辞退率を減らしたい採用担当者様

・採用責任者様

・経営者様

 


 

 

 

■採用活動に満足していますか?

 

就職情報会社のディスコによると、2022年春卒業予定の大学生・大学院生の就職内定率は71.8%(6月1日時点)

前年同月を7.8ポイント上回り、現行の就活ルール(3月に広報開始、6月に選考解禁)になった2017年卒以来、最も高い内定率です。

 

すでに5月末時点で23年卒の内定率も19%となっており(ウォンテッドリー社調べ、超早期型選考も実施され、インターンシップなどを通じた採用の早期化が各社で進んでいることが窺えます。

 

オンライン採用元年と呼ばれた2020年に試行錯誤しながらオンライン選考を経験するなかで多くを学び、それを2021年の採用活動で活かしている企業様が多いですよね。オンラインもだいぶ慣れてきたなかで、自社での採用活動における満足度はどのくらいでしょうか?

 

弊社は各社様の新卒採用をご支援させていただいていますが、採用活動における悩みは尽きず、企業規模や業種、業界などによって様々なご相談をいただきます。そこで、現行の選考見直しのための一つの視点として《RJP》とその最大のポイントをご紹介しましょう。

 

 

 

■《RJP》の実践が採用活動の質を左右する?!

 

選考過程において、「ここが弊社の強みだよ!いいところだよ!」と自社の良いイメージは積極的に学生へ伝えていますよね。では、悪いイメージも同じくらい積極的に伝えていますか?

 

会社の強みも弱みも伝えていかなければ!という意識は以前に増して強くなってきたかなと感じますが、ただ、正直なところ、悪いイメージにつながる事実は、噓をつかないまでも積極的には情報開示しづらいな・・・と感じている企業様はあるのではないでしょうか。伝えたことでどういうイメージを持たれてしまうのか、優秀な人材が他社へ流れてしまうのではないか、いろいろ懸念してしまいますよね。

 

ですが、実際に良いイメージだけを伝えるのではなく、企業の姿勢として自社の課題や弱み、仕事のつらさや短所など、実態を学生に伝えることで、採用の質が向上したという事実が多数報告されています(※1:就職みらい研究所『就職白書2020』より)

 

つまり、選考過程において、企業側の課題や基準など「ありのままのリアル」を詳細に学生へ開示することが採用の質を左右するということがわかりました。

 

実はこれ、《RJP》という先行研究で明らかになっていることなんです。RJPとは、「Realistic Job Preview」の略で、組織や仕事についてネガティブな情報も含めて誠実に応募者に伝える、現実主義的な情報開示のこと。

「ありのままのリアル」を伝えたことで、学生自らが事前に選抜を行うセルフスクリーニング効果によって母集団が小さくなるのではないか・・・?優秀な人材も減少してしまうのではないか・・・?という懸念については、一見ごもっともに思えるのですが、RJP 理論の研究者Wanouらによって、その仕事にふさわしい応募者が減るわけでないことが実証されています(※1)

 

そのほかにも、入社後のリアリティショックの予防や、エンゲージメントを高めて入社後の高いコミットメントを引き出す効果が確認されており、懸念が払しょくされる研究結果が出ています。

 

 

(※2:就職みらい研究所『就職白書2021』p37図2より)

 

 

 

■確証バイアスに注意して!

 

ただし、ここで注意点が。「自社の短所も伝えた」企業と、「短所も把握してもらう姿勢を感じた」学生は、なんと25.2ポイントも差がありました(※2)。

 

(※2:p36図1より)

 

 

これを見ると、伝えた企業側と伝えてもらった学生側に大きなギャップがあることがわかります。そうなんです、意外にといいますか、びっくりするほど伝わっていない・・・!企業としては「伝えたつもり」になってしまっているということですね。

 

うーん、これは、学生が聞いていないのでしょうか?

 

いえ、そうではなく、実は「確証バイアス」が働くからなんです。確証バイアスとは、認知心理学や社会心理学における用語で、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のこと。認知バイアスの一種です。

 

私たちは、すべての情報をそのまま受け取っているのではなく、無意識に取捨選択しています。でないと、脳がパンクしちゃいますものね笑。

 

つまり、求職者である学生は、企業が発信する情報のなかからほしい情報を選択的に摂取する傾向があるということ。

 

ここ重要なので、もう一度笑。求職者は企業からの情報をすべて受け取っておらず、企業に対して自らすでに抱いている印象や仮説を支持する情報に焦点を当てる傾向があるということです。

 

私も大学で就活支援をしていますが、とくにネガティブな情報提供をする際には、確証バイアスにひっかからないように、言葉を選び、時に強調しつつ、でも煽り立てることのないよう気をつけながら伝えることもしばしば。そして、「今言ったこと、伝わってるかな?どんなふうに理解してる?」と確認しながら進めています。

 

選考においても、企業の強みや課題といった情報の性質に応じて、「いつ(開示タイミング)」「どういう伝え方で」「どこ(誰)から(開示者、開示媒体)」情報開示を行うかを見極め、確実に伝わるタイミングと方法を選んでいきたいですね。

 

 

 

■学生との誠実なコミュニケーションが採用満足度を上げる

 

「総合的な採用満足度」に影響を与えているのは、自社の強みも弱みも含め、「ありのままのリアル」を伝える学生とのコミュニケーションです。これは、学生に対する誠実な姿勢ともいえますね。

 

十分な時間を設けながら、学生へ思考を促したり、適切な方法とタイミングで情報を開示したり、さらには、多くの社員との接点を持ちながら、企業理解の場を設けていく・・・それらが学生のエンゲージメントを高め、企業と学生の両者において満足度を上げていきます。

 

今回の記事に関連して、『選考過程で伝えるべき、選考・内定辞退を防ぐ5大キーファクター』をお役立ち資料でお伝えしています。無料でDLできますので、22年卒、そして23年卒の選考にどうぞお役立てください。

 

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▼参考資料:
※1:就職みらい研究所『就職白書2020』
※2:就職みらい研究所『就職白書2021』