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2021年10月15日

不確実な現代における、リスキリングとリカレント教育の重要性と意外なポイント。

育成支援図鑑

 

キャリアコンサルタント&広報担当 鈴木さくらです。

ここ数ヶ月で一気に目にする機会が増えた「リスキリング」。今、注目のワードです。

 

今回は、人生100年時代と言われ、職業人生の長期化とともに定年の引き上げも進む中、不確実な現代における企業のサバイバルはもちろんのこと、働く個人にとってのサバイバルにも必須なリスキリングとリカレント教育の重要性と意外なポイントについてお届します。

 

 

 

■急速な注目ワード「リスキリング」

 

一気に注目度が高まっているリスキリングとは、以下のように説明されています。

 


「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」
(出典:『リスキリングとは -DX時代の人材戦略と世界の潮流-2021年2月26日リクルートワークス研究所


 

 

簡単に言えば、“職業能力の再開発、再教育”という意味です。近年では、DX(デジタルトランスフォーメーション)に対応するための人材戦略として、デジタル化と同時に生まれる新しい職業や、仕事の進め方が大幅に変わるであろう職業に就くためのスキル習得を指す言葉として、使われることが多くなりました。

 

法人向けオンライン研修「テックアカデミーIT研修」を運営するキラメックス株式会社による『企業のリスキリング実施に関する調査』では、今後リスキリングに取り組む・継続する予定の企業は79.0%。企業における従業員へのリスキングに対する意欲が高めであることがわかります。

 

また、厚生労働省から今年3月に発表された、令和3年度から令和7年度までの5年間にわたる職業能力開発施策の基本方針を示す『第11次職業能力開発基本計画』においても、労働者の自律的・主体的なキャリア形成支援の項目で「労働者は、日々の業務を通じて職業能力の向上を図るとともに、企業任せにするのではなく、若年期から自身の職業能力開発の必要性を継続的に意識しながら、時代のニーズに即したリスキリングやスキルアップを図っていく必要がある」と、リスキリングが重要視されていました。

 

企業側の視点のみならず、個人側からも積極的なリスキリングへの取組みを勧めていることがわかります。

 

 

 

■学び続ける企業・人がサバイバルできる

 

リスキリングは「これからも職業で価値創出し続けるために、必要なスキル」を学ぶ、という点が強調されています。先を見据えた視点が必要になり、企業課題と戦略に合わせた人材戦略としてのリスキリングといえるため、サバイバルをかけて各社がリスキリングを軽視することはできなくなったといえるでしょう。

 

また、リスキリングと似た言葉で、「リカレント教育」があります。

 

リカレント教育とは、学校教育からいったん離れて社会に出た後も、それぞれの人の必要なタイミングで再び教育を受け、学び直しをしたり、今の時代に求められる知識・スキルにアップデートしたり、仕事と教育を繰り返すこと。生涯を通じて学び続けていくことともいえ、今後のキャリア形成にももちろん役立ちます。リカレント教育をきっかけとした人材の流動化は確かに起きており、大企業のみならず中小企業にも広がってきていますよね。

 

昨今、「学び」への注目はさらに高まっていることを感じます。実際私自身、国家資格キャリアコンサルタントを養成する講座の講師も担当していますが、コロナ禍に入ってからというものの、オンラインも通学コースもどの講座も満員状態。先行きの不透明さが増した今、資格取得への動きも以前に増して活発化していることをひしひしと感じます。

 

それぞれが自らのキャリアと向き合って、主体的に能力開発をする流れが強まっているようです。リスキリングでもリカレント教育でも、学ぶ姿勢は不確実な社会をサバイバルする重要な策といえるでしょう。

 

 

 

■予期せぬ出来事をうまく新たな学習へ結びつける

 

とはいえ、学びへの注目度は高まったものの、既述の『第11次職業能力開発基本計画』のなかでは、自己啓発を行った正規雇用労働者の3割弱が「どのようなコースが自分の目指すキャリアに適切なのかわからない」と回答していたことがわかりました。

 

たしかに、先行き不透明な今後と自らのキャリアを照らし合わせたうえで、職業人として価値創造し続けてうまく機能するために、どれが最適な学びのコースなのか、自ら判断し、計画することは難しいかもしれませんね。

 

そんなときには、こんな考え方を持っておくといいかもしれません。それは、クランボルツの(みんな大好き、という枕詞がついてしまう)「計画された偶発性~Planned Happen Stance Theory~」。これはキャリアにおける偶然の出来事の影響を軽視せず、むしろ積極的に取り組み、より良いキャリア形成に活用することを提唱した理論です。キャリアの8割は偶然によってもたらされる、というクランボルツの研究結果から生み出された理論として、多くの人に好まれる理論の一つです。

 

この理論は、決定をするより未決定であることの方が予期せぬ出来事をうまく新たな学習へと結びつけることができるとされており、未来は予測や計画通りに進まないものとして、それを学習の機会として捉えています。

 

その時に持ち合わせておくべきものは、①好奇心(新たな学習機会を模索すること)、②持続性(うまくいかなくても諦めないこと)、③楽観性(予期していたことと違う出来事でもプラスに捉え楽しむこと)、④柔軟性(これまでの概念や新年に固執せず、状況や時代に合わせて考えを変えていくこと)、⑤リスクテイキング/冒険心(結果が見えなくても行動を起こすこと)。

 

変化が速く、不透明な現代において、リスキリングやリカレント教育はますますその重要性が増していきますが、予測通り・計画通りに進まないことは多々あります。そんなときは予期せぬ出来事を新たな学習の好機と捉え、サバイバルしていくことも必要なのかもしれませんね。

 

(おしまい)